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楽園のカンヴァス


楽園のカンバス

貧しい画家が絵の具やカンヴァスを買うお金がなくて、すでに描いてある絵を
つぶしてその上に新しく描くとかいう話はよく聞きますが、まさにそれが核と
なっているこの小説はミステリーとロマン満載で、最後まで目が離せない
展開です。

この原田マハという作家は美術に造詣が深く、自身もニューヨーク近代美術館
に勤めていた経験の持ち主ですから、その目の付けどころはさすがです。
よくある「美術ミステリー」とは違って、登場人物の内面的なものが繊細に
描かれているあたりは女性作家ならでは。
特に画家の描く事に対する情熱の表現は感動的で目頭が熱くなりました。

物語の中にサロン・ドトーヌが出てくることも私にとっては大きな魅力。
現在のサロン・ドトーヌの当時(つまりドランやブラックなどフォービズムや
キュビズムの画家達の活躍の舞台となっていた)の様子などを想像すると
ワクワクしますし、今そこに自分も参加しているという光栄に胸躍る思いです。

折しもタイミング良く、2017年のサロン・ドトーヌの展覧会報告が届き
10月のパリの空の下、シャンゼリゼ通りからコンコルド広場に大パビリオンが
特設され盛大に開催されたサロン・ドトーヌは連日多くの来場者を迎え
成功のうちに幕を閉じた。と記してありました。

中でも来場者のインタビュー記事に
「私はいつも、このサロンに敬意を抱いています。
 アートとは人間の営みであり、アートも人間も最も高潔なものは深奥に宿る
 と思うからです。この会場は一時的なものですが作品の美しさは私の胸に
 残り続けます。」
というものがありました。

さすが芸術の都ですねぇ。アートに対する考え方の深さは、やっぱり日本とは
違うなぁと感じます。
こんな風に毎年楽しみに見に来てくださる方がいらっしゃることは、作家に
とってどれだけ大きな励みになることでしょう。
創立より114年、今尚こうして世界中の作品を集めて行われているサロン・
ドトーヌに天国の先人達も祝福を送ってくれていることでしょう。

さて本の感想に戻りますが、だいたい謎が解けないままに話が終わると
何かスッキリしない後味の悪い気分になるものですが、これは珍しく
解けない謎がロマンティックなベールで物語を包んで、より魅力的なものに
している気がしました。
アートが好きな方もそうでない方も絶対に楽しめる物語です。

コメント

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No title

こんにちは! 原田マハ氏の本、私結構すきで何冊か読んでいます。でもこの本は未読。氏の中ではもっとも知られている作品だと思いますが・・・。サロンドトーヌが登場するのですね! 近いうちに読んでみようと思います。
(私は、同氏の美術ものでしたら『ジヴェルニーの食卓』という本が好きです)

絵美さま

まあ、そうでしたか。私は次に「ジヴェルニーの食卓」を読んでみようと思ってました(笑)
サロン・ドトーヌちょこっと出てきます。
美術愛好家の層が厚いというか、美術関係でない普通の人々がカフェでアート談義に花を咲かせる国ですから、サロン・ドトーヌも100年以上も続いてきたのでしょうね。

No title

この作家さん 気にはなっていたのですか、そうですか おすすめ ですか。
もうこの頃は情報量が少なくなっていて、何を読んでいいのかわからなくなり、本棚の本を読み返していたりするので、教えてもらってうれしいです。
読んでみま~す (^O^)

風子さま

はい、私もお友達に教えてもらいました。
最近は雑誌の本の紹介などで、いいかと思って読んでみると「ちょっと・・・」だったり。
読んだ人に聞くのが一番安心だったりします。