憲法黒が生まれた所以

タロットの小アルカナは、数カード40枚と人物カード16枚
から成ることは前回書いた。
今は数カードの「稲穂」のスートを制作中だが、同時に
人物カードの資料になりそうな本を読み漁っている。
もとよりきものや布好きな私のこと、昔の人の衣装を調べると
興味深いことが多く、本筋を忘れて読みふけってしまう。
昔の人はなんとお洒落だったのだろう。
毎度、書いているがそれには驚嘆するばかり。

たとえば江戸風俗図鑑というのがあるのだが、その中の
よし原に通うダンナの出立ちなど「長羽織は黒無地の八丈と
黄八丈を重ね、花色縮緬のすそ回しをつけたお納戸茶の小袖を
着て、右手で褄をとり、らせん絞りと紅鹿子の襦袢を見せる。
その下には長羽織と対の黄八丈の下着。黒縮緬の大阪頭巾を
襟に巻く。緞子(どんす)の帯に脇差しを落差し、足袋は
はかずに、髪は本多マゲで決める」とある。(下写真)

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「江戸よし原などへ通ふたはれ男時の人通人と称す
 かさね羽織著たるさまなり」江戸風俗図巻より


もしこの様な男性が目の前にいたら、私はお願いして
そのきものに触りまくるだろう(笑)
かっこいい!
本当に昔のダンナはこんな出立ちでよし原に通ったの
だろうか・・・?


ところで四拾八茶百鼠というが、黒もまた欠かせない色
だったようだ。
ただの黒ではなく藍染めの後、楊梅(やまもも)で染め
鉄媒染で楊梅の茶色の色素を黒くすると、底色にある藍を
感じさせる「藍下黒」(あいしたぐろ)になる。
この染め方が「憲法黒」である。

それを生み出したのが吉岡家。
吉岡家、もとは武士に剣術を教える兵法師だった。
足利将軍に仕え、後に織田信長、豊臣秀吉に仕えたという
筋金入りの剣術師。
それが、宮本武蔵に道場破りされ(決闘したという説もある)
剣を捨て染屋に転向した。
豊臣方についた吉岡家は剣を捨てざるを得なかったという説も
ある。
なぜ剣を捨てたか、伝説はいろいろあるが、ともかく
江戸初期に吉岡家は染屋に転向し、この「吉岡憲法染」
(又の名を憲法黒)が大変、流行したと記述にあるので
もし、宮本武蔵が勝たなければこの「黒」は生まれなかった
のだろうか・・・? などと またもや妄想が膨らんでしまう。

きもの1つ、色1つにも歴史やロマンを秘めたこの興味深い
探求は、始まったばかり。
さて、16枚の「人物カード」はどの様な絵札となるのか?





コメント

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むか〜し有吉佐和子さんの「和宮様御留」を読んで、うろ覚えですが、
雨の降った後に散り敷く紅葉を見てだったか、
貴族さんの会話に「とんと憲法小紋のようでありますなあ」というのを読んで
はじめて憲法の色を知りました。
小袖の展示でも、ある時期まで黒は登場してませんものね。
ちなみに江戸好みは藍下、京好みは紅下と最初に知ったのも、有吉作品ででした。
時代の資料を知るって楽しいですよねえ〜♬

おおーー!大通!!
これで動いたらどんな感じになるのでしょう?
見てみたいですわぁ。

「憲法黒」、初めて知りました。
紅下黒、藍下黒と簡単にいうのはよく目にしますが、こんなに手が込んだものだったのですね。
古い着物を見ていますと、時間が経つとはっきり差がでるんですよねぇ。
いわゆるヨーカン色に焼け易いのが紅下だと聞いたことがありますが。

tomokoさま
へ〜、江戸好みが藍下、京好みが紅下なんですね。
本当に関東関西では、好みが違うものなんですね〜。
そうそう、憲法小紋というのも、吉岡家が作ったもので
「鮫小紋を地黒、鮫の紋浅茶色なるを憲法小紋と云ふ」と
ありました。ところで、この「憲法」という呼び名、もとは
兵法師だけに「剣法」からきているのでしょうかね?

りらさま
ね〜、見てみたいですよね〜。
「鬼平犯科帳」とかの再放送、つい見ちゃうんです(笑)
内容は二の次で主に、登場人物のきものや小物を見ています。
あと、町人や武家の生活とか・・・
この間、高橋悦史さん演じる同心がが座る時に刀を腰から左手で
ぬいて横に置いたのですが、なにげない所作が自然でかっこ良かった!
あんな所作も今はないものですから、きっと練習するんだろうな
・・・て、変なところで感心してしまいました。

こんにちは! うーんカッコいいですね。体形がまたこう、程よくどっしりしていて、着物が映えますね。私も絶対、写真撮りまくり、触りまくりだと思います(笑)。
染の深い知識はありませんが、確かに「ヤマモモ」が入ると同じ黒でもこっくりとするような。藍を引き立てるのですね。いつかそういう黒を粋に着こなしてみたい、とも思います。

絵美さま
黒と一言に言っても、きものは奥が深いですね。
光源氏が着た鈍色とか・・・。
これは日本人独特の感性だと思います。
せっかくのこの感性を若い人たちにも養っていって欲しいなぁ。
それには良いものに触れる、本物を見るという事だと
思うのですが・・・。
今の世の中ではなかなか難しいのでしょうか?
「安い、早い、簡単」に流れる今の風潮はちょっと残念です。

最近、吉岡幸雄さんの本を3冊を読み終えたばかりなので
憲法黒も記憶に新しい所です (^-^)b
ワタシも藍にころんだ黒が好き(笑)

香子さま
おお、素晴らしい! 3冊も読まれたのですか。 文学少女ならぬ文学熟女
ですね。香子さんの豊富な知識はやはり本からなのですね。
しかし、読書の秋。 私も何か長編小説でも読みたくなりました〜。