「ちらしずし」

ちらしずしというと、思い出すのは祖母のこと。
おばあちゃんの家に行くと日には、必ずちらしずしを作って待っていてくれた。
祖母に叱られた記憶はない。ただただ優しくて、愛情を注いでくれた。
彼女が駆け落ちをして祖父と一緒になったと聞いたのは、大人になってから。
しかもその時、人妻だった上に子供までいたのだ。
時代背景が今とは全く違う頃のこと、夫が刀を持って追いかけてきた。と、
聞いたような気がするが、それは私の空想だったかもしれない。
ともかく祖母は命がけで祖父に惚れたのだろう。
そんな激しいところがあったとは、私にはまったく想像もつかない。

祖父の記憶といえば、離れでほとんど寝ていた怖いおじいさん。
「怖い」というのは「戦争で片耳をなくし、足が不自由で骨と皮だけの
おじいさん」という彼のビジュアルからきている。
忘れられないのは、その彼に追い回されたこと。
彼にしてみれば、かわいい孫を抱きしめたかったのだろう。
でも、私にとっては生まれて初めてのホラー体験だった。
ズリッズリッと足をひきづりながら近づいてくる祖父の顔は、たぶん笑って
いたのだと思うが幼い私には妖怪にしか見えなかった。
祖父が亡くなってから彼の若いころの写真を見せられた時には、ひっくりかえる程
驚いた。超美形だったのだ。
祖母はまあ並みの器量だったので、これはどう考えても祖母が熱をあげたのに違いない
(と、私は勝手に解釈している)

それにしても子供を置いてまで祖父と一緒になりたかった祖母の情熱の凄まじさ、
女はこわい。でも良い悪いでは片づけられないのが男と女。
どれ程の覚悟をして家を出たのか、着の身着のままで飛び出した女が惚れた男と
手に手をとって夜道を歩いてゆく姿が脳裏に浮かんでくる。
その後の彼女の人生はなかなか大変だったのだが続きは、またの機会に・・・。

祖母の作ってくれた「ちらしずし」は写真のように豪華ではなく、本当に素朴な
ものだったが私には一番の御馳走だった。
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