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浜町

前回の続き


今回この五月花型歌舞伎を公演した明治座のある浜町と
いうのは 昔、父の「彼女」が住んでいた所。
「浜町」という地名は そのまま彼女の代名詞だった。

もうウン十年も前の古い話だが、その存在を知ってから一度も
浜町に足を向けたことはなかった。
父母が亡くなって数年たったので、そろそろ時効かしらね、と
お芝居の後で お茶を飲みながらM子姉と思い出話をした。

「浜町」は、その後しっかり正妻の座についた。
いわゆる修羅場というやつを、いくつも潜り抜け、一つの家庭が
壊れるのに何年もの時がかかった。
そしてさらに何年もの時が過ぎ「あの親父は酷い親父だった」と
笑って話せるようになるのだから「時」というのは凄いものだ。

人にはそれぞれ その立場というものがある。
たまたま今世では、こういう巡り合わせになってしまった・・・と
いうのか、自分の演じる役を母も浜町も、もう上で決めて降りてきた
のかもしれない、今はそう思えるようになった。

一つだけ言えることは、人を恨んだり憎んだりして一番辛いのは誰か、
というと 結局は自分なのだという事に気付かされたこと。

今回、この歌舞伎のお陰で久しぶりに「浜町」を思い出したが
そこに憎しみを感じなかったことが、嬉しかった。
父のことも、浜町のこともM子姉と笑い飛ばせたことが、嬉しかった。

私たちは心の封印を解いて父の悪口を思いっきり言いあった、笑いながら。
本当に酷い人だった。
でも、憎みきれないのは、やっぱり父だからだろうか・・・?
母は離婚してから、父のことは一切言わなかった。
病気のことも父のことも、グチを言わない母はカッコ良かったなぁ~。

夫婦の情、親子の情って 何とも複雑怪奇。
好きだけど嫌いで 憎いけど好きな唐草模様。
泣いて 怒って 笑って・・・また 泣いて。
人生って本当に 悲喜劇だな と、つくづく思う。


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