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「妻のトリセツ」

もし、40年前にこの本に出会っていたら、夫の心ない一言
(注・言ってる本人に悪気はない)に、傷つくこともなかっただろうに・・・。
でも、今この本と出会ったことに意味があるのかもしれません。
私は私なりに一生懸命、考えて、悩んで、怒って、諦めて、開き直って
解決策をその都度、見出してここまできたのですから。
夫もまた、なんで私が怒っているのか? どこで地雷を踏んでしまったのか?
分からないながらも、彼なりに暗中模索し、少しづつ修復させる術を身につけ
ここまで来たのです。
つまりこの40年間、夫も私も成長してきたのです。
別の言い方をすれば魂をみがいてきたのです。
(これが結婚の意義なのでしょうか?)

夫から見て妻の理不尽な言動も、妻から見て夫の意味不明な行動も
脳科学の見地から見れば「なるほど、そう言うことか〜」と理解できる(筈)
本です。

脳科学の専門家が分かりやすく男の脳、女の脳の違いを解説してくれているので
これを読めば、少しは夫婦間のトラブルが減るのに役立つかも・・・しれません。
「妻のトリセツ」ですから、多分夫が読む本なのでしょうが、妻も必読です。
お互いの「理解を超えた領域」を少しでも理解する努力をしましょう。

最後の説得力ある締めくくりの言葉がグッときます。
「夫婦というのは面白い。
かつて、永遠の愛を誓ったあの日の煌めくような「愛」とは似ても似つかないところに
「愛」の正体がある。
しかし結婚も35年を超えれば「理不尽な怒り」と「とほほ(苦笑い)」こそが暮らしの
アクセントであり、生命力の源であり、ふたりにしか分からない絆になるのである。」
(本文より)

「妻のトリセツ」 黒川伊保子・著 講談社


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「一切成り行き」

いつか本が出版されるだろうと心待ちにしていたのですが
早かったですね。
「一切成り行き 〜樹木希林のことば〜」

今年は特に身体のあちこちに不具合が生じて、こういう歳なんだなぁ・・・と
自分なりに納得してはいたのですが、それでも気分が落ち込む日も多々
ありました。

そんな時は希林語録をネットで探しては 慰められたものでした。
これが一冊の本となれば、もうこれは私の一生のバイブルです。

「病というものを駄目として、健康であることをいいとするだけなら、こんなつまらない
人生はないだろう」 (「一切成り行き」より)

本当にそうですねぇ。5年間、癌と闘ってきた方の言葉だから説得力があります。
私は当初、早く治して元の状態に戻さなくては・・・と焦りました。
まさに不具合を駄目な状態と捉えていました。
でも、時とともに足掻きながらも、だんだんと不具合を認められるようになってきました。

不具合を抱えた自分、これもまた私。
それを認めると少し楽になり、以前より自分を愛おしく思えました。
友人の助言や希林さんのことばのお陰です。

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希林さんのことばは心に響きます。
キレイゴトでない生の言葉、本音で言う言葉だからでしょうか。
もうこの世にいないと思うと寂しいけれど「希林さんのことば」は見事に生きてずっーと
私たちに語りかけてくれる、凄いなぁ と思います。


「一切なりゆき 〜樹木希林のことば〜」 文春新書


「女神の見えざる手」

たくさんの命が奪われる銃乱射事件が後を絶たないアメリカ。
どうして銃規制が進まないのか? その核心に迫る作品です。

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天才的な戦略を駆使して銃規制というアメリカの闇と真っ向から勝負する
ロビイストのスローン(ジェシカ・チャスティン)
勝つためにここまでやるのか?という疑問は残りつつも、彼女の信念の
強さには「恐れ入りました」という思いも湧いてくる。
観た人は賛否両論なのではないでしょうか?

男性優位の社会にあって媚びず甘えず、強靭な信念で仕事を遂行する彼女は
文句なしにカッコイイけど、心を許せる相手もなく、折れる心を高級なスーツや
ピンヒール、赤い口紅で武装する姿はちょっと切ない。

銃規制という大きなテーマはあるものの、見方を変えると女が男性社会で成功
するには、あまりにも多くを犠牲にしなければならないという現実をこの主人公を
通して目の当たりにした気がします。
それにしてもジェシカ・チャスティンの迫真の演技は素晴らしかった。


監督はジョン・マッデン(「恋におちたシェイクスピア」、「マリーゴールド・ホテルで
会いましょう」など)
現代は「Miss.SLOANE」
2017年作品

楽園のカンヴァス


楽園のカンバス

貧しい画家が絵の具やカンヴァスを買うお金がなくて、すでに描いてある絵を
つぶしてその上に新しく描くとかいう話はよく聞きますが、まさにそれが核と
なっているこの小説はミステリーとロマン満載で、最後まで目が離せない
展開です。

この原田マハという作家は美術に造詣が深く、自身もニューヨーク近代美術館
に勤めていた経験の持ち主ですから、その目の付けどころはさすがです。
よくある「美術ミステリー」とは違って、登場人物の内面的なものが繊細に
描かれているあたりは女性作家ならでは。
特に画家の描く事に対する情熱の表現は感動的で目頭が熱くなりました。

物語の中にサロン・ドトーヌが出てくることも私にとっては大きな魅力。
現在のサロン・ドトーヌの当時(つまりドランやブラックなどフォービズムや
キュビズムの画家達の活躍の舞台となっていた)の様子などを想像すると
ワクワクしますし、今そこに自分も参加しているという光栄に胸躍る思いです。

折しもタイミング良く、2017年のサロン・ドトーヌの展覧会報告が届き
10月のパリの空の下、シャンゼリゼ通りからコンコルド広場に大パビリオンが
特設され盛大に開催されたサロン・ドトーヌは連日多くの来場者を迎え
成功のうちに幕を閉じた。と記してありました。

中でも来場者のインタビュー記事に
「私はいつも、このサロンに敬意を抱いています。
 アートとは人間の営みであり、アートも人間も最も高潔なものは深奥に宿る
 と思うからです。この会場は一時的なものですが作品の美しさは私の胸に
 残り続けます。」
というものがありました。

さすが芸術の都ですねぇ。アートに対する考え方の深さは、やっぱり日本とは
違うなぁと感じます。
こんな風に毎年楽しみに見に来てくださる方がいらっしゃることは、作家に
とってどれだけ大きな励みになることでしょう。
創立より114年、今尚こうして世界中の作品を集めて行われているサロン・
ドトーヌに天国の先人達も祝福を送ってくれていることでしょう。

さて本の感想に戻りますが、だいたい謎が解けないままに話が終わると
何かスッキリしない後味の悪い気分になるものですが、これは珍しく
解けない謎がロマンティックなベールで物語を包んで、より魅力的なものに
している気がしました。
アートが好きな方もそうでない方も絶対に楽しめる物語です。

Never ret me go

時の人、カズオ・イシグロ原作の小説を2010年イギリスで映画にしたものです。
日本語題は「私を離さないで」

     私を話さないで


あまりにも衝撃的な内容で、簡単に感想など言えません。
重くて、深くて、美しい・・・魂にうったえてくる映画。

原作を読んでいないので、この作品が原作に忠実なのか?どうかは
分かりません。イギリス郊外の謎の施設の子供達、やがて
大人になってゆく3人の過酷な運命。
人間の尊厳っていったいなんだろう? その重いテーマを少し
癒してくれるのは、緑の森や水平線の見える海、打ち上げられた船。
いかにもイギリスっぽい灰色の空。

いつか原作も読んでみようか・・・と思いますが、今はまだいいと
いうのが正直なところ。
本当にこんな場所があるのではないか?と思わせるほどのリアルな
描き方ですが、実話ではないと知って少し安心しました。
表向きには・・・ですが。


「私を離さないで」 カズオ・イシグロ原作
監督:マーク・ロマネク  脚本:アレックス・ガーランド