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「女神の見えざる手」

たくさんの命が奪われる銃乱射事件が後を絶たないアメリカ。
どうして銃規制が進まないのか? その核心に迫る作品です。

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天才的な戦略を駆使して銃規制というアメリカの闇と真っ向から勝負する
ロビイストのスローン(ジェシカ・チャスティン)
勝つためにここまでやるのか?という疑問は残りつつも、彼女の信念の
強さには「恐れ入りました」という思いも湧いてくる。
観た人は賛否両論なのではないでしょうか?

男性優位の社会にあって媚びず甘えず、強靭な信念で仕事を遂行する彼女は
文句なしにカッコイイけど、心を許せる相手もなく、折れる心を高級なスーツや
ピンヒール、赤い口紅で武装する姿はちょっと切ない。

銃規制という大きなテーマはあるものの、見方を変えると女が男性社会で成功
するには、あまりにも多くを犠牲にしなければならないという現実をこの主人公を
通して目の当たりにした気がします。
それにしてもジェシカ・チャスティンの迫真の演技は素晴らしかった。


監督はジョン・マッデン(「恋におちたシェイクスピア」、「マリーゴールド・ホテルで
会いましょう」など)
現代は「Miss.SLOANE」
2017年作品

楽園のカンヴァス


楽園のカンバス

貧しい画家が絵の具やカンヴァスを買うお金がなくて、すでに描いてある絵を
つぶしてその上に新しく描くとかいう話はよく聞きますが、まさにそれが核と
なっているこの小説はミステリーとロマン満載で、最後まで目が離せない
展開です。

この原田マハという作家は美術に造詣が深く、自身もニューヨーク近代美術館
に勤めていた経験の持ち主ですから、その目の付けどころはさすがです。
よくある「美術ミステリー」とは違って、登場人物の内面的なものが繊細に
描かれているあたりは女性作家ならでは。
特に画家の描く事に対する情熱の表現は感動的で目頭が熱くなりました。

物語の中にサロン・ドトーヌが出てくることも私にとっては大きな魅力。
現在のサロン・ドトーヌの当時(つまりドランやブラックなどフォービズムや
キュビズムの画家達の活躍の舞台となっていた)の様子などを想像すると
ワクワクしますし、今そこに自分も参加しているという光栄に胸躍る思いです。

折しもタイミング良く、2017年のサロン・ドトーヌの展覧会報告が届き
10月のパリの空の下、シャンゼリゼ通りからコンコルド広場に大パビリオンが
特設され盛大に開催されたサロン・ドトーヌは連日多くの来場者を迎え
成功のうちに幕を閉じた。と記してありました。

中でも来場者のインタビュー記事に
「私はいつも、このサロンに敬意を抱いています。
 アートとは人間の営みであり、アートも人間も最も高潔なものは深奥に宿る
 と思うからです。この会場は一時的なものですが作品の美しさは私の胸に
 残り続けます。」
というものがありました。

さすが芸術の都ですねぇ。アートに対する考え方の深さは、やっぱり日本とは
違うなぁと感じます。
こんな風に毎年楽しみに見に来てくださる方がいらっしゃることは、作家に
とってどれだけ大きな励みになることでしょう。
創立より114年、今尚こうして世界中の作品を集めて行われているサロン・
ドトーヌに天国の先人達も祝福を送ってくれていることでしょう。

さて本の感想に戻りますが、だいたい謎が解けないままに話が終わると
何かスッキリしない後味の悪い気分になるものですが、これは珍しく
解けない謎がロマンティックなベールで物語を包んで、より魅力的なものに
している気がしました。
アートが好きな方もそうでない方も絶対に楽しめる物語です。

Never ret me go

時の人、カズオ・イシグロ原作の小説を2010年イギリスで映画にしたものです。
日本語題は「私を離さないで」

     私を話さないで


あまりにも衝撃的な内容で、簡単に感想など言えません。
重くて、深くて、美しい・・・魂にうったえてくる映画。

原作を読んでいないので、この作品が原作に忠実なのか?どうかは
分かりません。イギリス郊外の謎の施設の子供達、やがて
大人になってゆく3人の過酷な運命。
人間の尊厳っていったいなんだろう? その重いテーマを少し
癒してくれるのは、緑の森や水平線の見える海、打ち上げられた船。
いかにもイギリスっぽい灰色の空。

いつか原作も読んでみようか・・・と思いますが、今はまだいいと
いうのが正直なところ。
本当にこんな場所があるのではないか?と思わせるほどのリアルな
描き方ですが、実話ではないと知って少し安心しました。
表向きには・・・ですが。


「私を離さないで」 カズオ・イシグロ原作
監督:マーク・ロマネク  脚本:アレックス・ガーランド







横浜カフェ散歩

横浜に越して20年経つのに、あんまり横浜のこと知りません。
行く場所ってだいたい決まっていて、全く冒険してないなぁ
と思っていたところ、こんな本を見つけました。

横浜カフェ散歩

著者のMARUさんが、10ヶ月かけて横浜のカフェを食べ歩き
レポしたものです。
面白いカフェがたくさん載っていて、すぐにでも行ってみたい、と
思う所もありました。

それにしてもカフェって、ストーリーがあるんですね。
表紙のカフェは元町にある「JH Cafe」で、オーナーがハリウッド映画が
大好きでハリウッドに足を運び、ロケを見学し、パーティーに参加して
いるうちにハリウッドスターとも仲良くなっていった、という強者。
店内にはスターの写真や映画に使われた小物がズラリと並んでいて
大きなスクリーンでは映画も堪能できるそう。
店に入ったらお茶を飲む前に、まず店内をグルーッと見学しちゃいそうです。

中華街にある「ROUROU Cafe」は絶対行ってみたい!
「アジアのどこかにある国、朧朧国(ロウロウコク)。そこに住むアーティスト達
がデザインした洋服がインポートされてきている、というコンセプト」で
このカフェはアーティスト達が集う場をイメージしたのだとか。
オーナーはアパレルブランド「ROUROU」の社長さん。奥様はパリコレの
モデルさんだったのだそう。
独特のこの世界に浸ってみたいぞ。

ROUROUカフェ


その他にも歴史のある建物内にあるカフェとか、山手の洋館のカフェとか
興味深い所もたくさん載っています。
まずはじっくり、この本で研究して、爽やかな秋晴れの午後とかに
私の「カフェ散歩」に出かけましょう。




安冨 歩さんの本

同じ著者の本を立て続けに読むことは、あまりないのですが
この方の本、続けて読んでしまいました。

ありのままの私

最初は単純に女装の東大教授って、どういう人なのだろう?という興味から。
この本では彼(彼女?)がなぜ女装をするようになったのか?
別にゲイではなく、パートナーは女性ですし、ただ女性の恰好をして美しくした方が
自分らしく、安心していられるそうです。
ふむふむ、そういうのもあるんですね。
一言でゲイとかストレートとかでは片付けられない複雑な時代なんですねぇ。
でもそばにこういう方がいたら、普通にお友達になれそう。


生きる技法

で、次に読んだのがこちら。
「自立とは多くの人に依存すること」という衝撃的な、と言うか今までの
常識ではとても理解出来ないことなのですが、でも読んでいくうちに、そうかも
しれない、と思えるようになりました。
彼の中にある母親との関係がすべての核なんですねぇ。

親は子供の為、子供の将来の為、と言っていろいろな事に口を出しますが、
それは「親にとって都合の良い押しつけではないのか?」
ちょっとドキッとしました。多かれ少なかれ、親は子供に勉強させる時、良い学校(と
いう価値観が分かりませんが)に入れようとする時、それが子供の為と考えますが
本当にそうなのかどうか・・・?
親は無意識のうちに自分のエゴで子供を支配しようとしているのではないのか?
子供に対するそういう感情を「愛情」と勘違いしている親は結構多いのではないで
しょうか。
自分の親のこと、そして親としての自分を顧みて、ちょっと古い傷が疼くような感じ
を覚えました。


他にも「自愛」と「自己愛」の違い、嫌われるのを恐れると誰にも愛されない、
とか、貨幣について、自由について、等々 興味深い作者ならではの解釈が
綴られています。


老子の教え

そして、最後がこちら。
難解な「老子」を安冨さんがどう解釈するのか?
とても読みやすかったです。だからと言って理解出来たかと言うと、読んだ時は
分かったような気になるのですが、手のひらにすくった砂が指の間からいつの間にか
サラサラと・・・みたいな(笑)
それでも好きだな〜。
「確かなものにすがろうとするから不安になる。あやうさを生きよ」
グッときますよね、この言葉。

私、これを読むまで老子って「老子」っていう人が書いたんだと思ってました。
「二千数百年前に書かれたこの本はそもそも抽象的な議論に終始していることの
反映」「この本が1人の思想家によって書かれたと考えて、その人を仮に
老子、と呼んでいるに過ぎない」と序文に書かれていました。
二千数百年前にこの本が書かれたこと(しかも作者も分からない)ビックリですね。
安冨さんは5年かけてこの本の訳に取り組んだそうです。

安冨さんの著書はたくさんあるのですが、たまたま選んだこの3冊、彼の過去、
現在、未来に触れたようなチョイスでした。
どれか興味を持たれた本はありましたか?