Hela細胞

昨夜、あるテレビ番組を見て始めて知りました、ヒーラ細胞のこと。

ヒーラ細胞とは
「ヒト由来の最初の細胞株。1951年に子宮頸癌で亡くなった30代黒人女性
ヘンリエッタ・ラックスの腫瘍病変から分離され株化された。」

ご本人は1951年1月に癌と診断され、その年の10月に亡くなっているので
まさか自分の細胞が培養され、その後の医学に多大なる貢献をしたことなど
知る由もありません。彼女の子孫でさえ、それを知ったのは亡くなってから
20年以上経ってからですから。

当時はインフォームド・コンセントもないし、培養に成功したガイ博士も
人類の医療の為にと研究され、確かにその結果ポリオワクチンなどが完成して
世界中の多くの子供の命を救っているわけですから、それを思えば素晴らしい
ことです。

でもラックス家の人達から見れば、知らない間にヘンリエッタ・ラックスの
細胞を使われて、知らない所で化学療法やら体外受精の研究やらに使われ、
しかも今もヒーラ細胞はバイオ産業の商品となっているのです。
本人は亡くなっているのに、その細胞は不死でこれからも増殖を続け、さらに
いろいろな研究に使われてゆく。
これは身内にとっては複雑な心境なのではないでしょうか。

ヘンリエッタの長男は医者や科学者に不信感が強く(当たり前ですよね)
話し合いが持たれたのは随分後になってからのようですが、それでも
今はヘンリエッタ・ラックス財団も設立され、彼女の子孫もその恩恵を
受けられたということを知って、少しホッとしました。

ここで医者や科学者の倫理観をどうこう言うつもりはありませんが、
人間の尊厳とか、もっと突き詰めて一体人間はどこまでやっていいのだろう?
これから医学がさらに進歩すれば、もっと難しい問題、つまり「神の領域」
というようなものにぶつからざるをえない。いえ、もうぶつかっているのかも
しれませんが・・・。
人間は常に謙虚さを忘れてはいけないと深く感じました。

そして人類の医療に大きく寄与しながらも、人に知られることもなく
亡くなったヘンリエッタさんに心からの感謝を捧げたいと思いました。
孫達がポリオワクチンを受けられるのも彼女のお陰ですからねぇ。


       おおむらさき




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コメント

No title

私もたまたまその番組をつけていて
その内容にすっかり見入ってしまいました。
世の中には知らないことの上に
感謝すべきことがたくさんあるのだなあ・・・と。
そばでお母さんをみてきた息子さん、心に痛みを抱えつつも
未来を見据えてでしょうか、いいお顔されているなあと思いました。

tomokoさま

やっぱり見てたぁ? あの長男さんのお顔は私も忘れられません。何年も苦しんでご自分なりに気持ちの持って行き場をみつけて母を誇りに思うと言ってくれた時にはこちらも救われた気がしました。財団のことはテレビでは言ってませんでしたが「不死細胞ヒーラ」という本を書いたレベッカ・スクルートさんが働きかけて設立したようです。その本も読んでみたいな〜。本当に知らないうちに誰かのお陰で今の生活があったりするんですねぇ。

No title

実は、私も今朝録画した番組を見ました。
いや~、実に複雑な気持ちでしたね。
医学の進歩はありがたい事だけれど、その裏にこんな真実が
あったとは・・・驚くばかりでした。

sognoさま

本当ですねぇ。随分長いこと生きてきたと思ってましたが、知らないことってきっともっとたくさんあって、知らないまんま死んじゃうんだろうな〜って。ヘンリエッタさんのことは、もっと多くの人が知るべきではないかって思って思わずブログに書いちゃいました。

No title

40代になって勉強していたときに、この細胞のことを知って ? ? ?が一杯でした。
それでこの番組 楽しみにしてたのです。
拝見して ほーっと腑に落ちたことがたくさん。
番組では けっこう問題は解決しつつあるように、お話していたけど たぶん 実情はまだまだなんじゃないかなと 感じています。

風子さま

そうでしたか、考えてみれば不思議ですよね。ほとんどの細胞が死滅する中、なぜ彼女の細胞だけは生きて、増殖を続けるのか。彼女は選ばれた人だったのでしょうか?宗教と科学が融合する日がくるのでしょうか?
人知の及ばぬ何かを感じます。そしてこのテーマはずーっとスッキリしないままなのでしょうねぇ、きっと。

No title

こんにちは。とかく西洋医学は「病気だけみて人を診ず」なんて批判を浴びたりしますが、その原点みたいな顛末ですね。
一方で、今日、健康な女性では初の、凍結卵子による出産のニュースがあり、生命って何だろうと考えさせられます。

絵美さま

「冷凍卵子」んー、冷凍卵子ねえ・・・。何だかなぁ。医学の進歩って本当に進歩なんでしょうか?よく分からなくなる事があります。人間はどこまで行くんでしょうねぇ。
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プロフィール

朋百香(tomoko)

Author:朋百香(tomoko)
1955年埼玉県生まれ東京育ち。
幼少時から学生時代は、水彩、
油絵を学び、結婚後は子育てを
経てのち植物画に魅了され、
個展やグループ展にて発表。
イギリスのフィンドホーンへ
の旅をきっかけに自己の内的
プロセスを描写する、様々な
素材を用いた独自のミクスト
メディア作品制作に入る。
現在は和紙に墨、アクリルで
墨アートを表現している。
神奈川県在住。

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